利用規約

①法律に違反しない利用規約を作る方法

  受託開発が先細る中で、自社のWEBサービスやアプリの販売を手がけるIT企業が増えていますが、皆さんどう利用規約を作ればいいか、悩んでいるかと思います。

 似たようなWEBサービスやアプリの利用規約を真似して、何となくで作っている企業も多いようですね。

 

 ですが、これは危険なことです。

 というのは、利用規約をきちんと作らないと、会社が倒産するようなリスクもあるのです。

 

 WEBサービスやアプリが、受託開発と大きく違うこと、それはユーザーの数が膨大になるということです。

 ということは、もしシステムに不具合などが起きて、ユーザーに損害が生じた場合、会社が負担する損害賠償額は、莫大になってしまいます。ユーザー1名あたりの損害額×ユーザー数=損害賠償額ですからね。

 

 その対策として、利用規約には、「免責規定」や「損害賠償制限規定」が不可欠です。

 

 IT企業の皆さんなら、2012年6月に発生したファーストサーバー事件(データ障害により5000以上のユーザーのデータが消失)はご存知ですよね。

 この事件で、ファーストサーバーは、莫大な損害賠償額を負った、、、と思いきや、1ユーザーあたり少額の賠償金しか負担しませんでした(私の顧問先企業も被害を受けましたが、提示された賠償金は数万円だったそうです)。

 というのは、ファーストサーバーは利用規約の中で、「免責規定」や「損害賠償制限規定」をしっかりと定めていたので、本来の損害賠償額を大幅に抑えられたわけです。

 

 「それは知らなかった!」という会社は、今すぐ自社の利用規約を見直して下さい。

 その一方で、「うちの利用規約にはちゃんと規定があるから大丈夫」と思った会社さん、本当にその規定は正しい内容でしょうか。実はその規定、法的に無効かもしれません。

 

 そもそも利用規約は、好き勝手に作っていいわけではありません。法律に違反する規定は、無効になります。

 そして、ユーザーにあまりにも不利な規定は、「公序良俗」に違反して無効になる可能性が高いです(実際そういった裁判例もあります)。

 

 となると、「いかなる理由で生じた損害であっても当社は一切責任を負わない。」といった完全な免責規定は、無効になる可能性が高いわけです。

 

 今のはあくまでも「可能性」の話ですが(公序良俗違反のラインは読み切れないので)、これがBtoCのサービス(アプリ)の場合、完全な免責規定は「確実」に無効です。

 なぜなら、消費者契約法に違反するからです。

 

 消費者契約法は、消費者保護のための法律でして、消費者に不利な一定の契約を無効と定めています。

 その中で、法8条1項1号は、事業者側の完全免責規定は無効と定めているのです。

 

 以上まとめると、BtoBの場合、完全免責規定は無効の可能性が高く、BtoCの場合だと、確実に無効なので、いずれにせよ、完全免責規定は入れない方がいいです。

 

 こうアドバイスをすると、「それは分かった。でも、ユーザーだって法律に詳しくないから、とりあえず入れてみて、文句を言われたら賠償する。」という企業も中にはいます。

ですが、企業倫理として間違っています。

 

 専門家にチェックをしてもらい、法律に違反しない内容の利用規約を作成しましょう。

 

 

②利用規約への同意を有効に取る方法

  自社に有利な利用規約をせっかく作っても、ユーザーから同意を取らなければ、その利用規約はユーザーとの契約関係に適用されません。その一方、ユーザーから同意を取る手続きを厳格にやり過ぎると(書面で申込書を送る必要があるなど)、ユーザーが面倒に感じて、サービスを利用してくれません。

 ユーザーからの同意の取り方は、とても悩ましい問題です。

 

 皆さんの中には、『うちは利用規約の中に、「ユーザーは、本サービスを利用することにより、本規約に同意したものをみなされます。」という規定を入れているから、ユーザーから同意は取れている!』と思っている方がいるかもしれません。

 ですが、これだけで同意が取れているとは言えないので、注意してください。

 

 

経済産業省の見解

 では、どうすればユーザーから同意を取ったと言えるのでしょうか。困ったときは、お役所の見解を聞きましょう。

 

 経済産業省は、WEBサービス等に関する様々な法律問題の解決基準を示すべく、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を、経済産業省のサイト上で公表しています。

 この準則の中では、利用規約の同意の取り方について、以下のように書かれています。

 

 取引の申込みにあたりサイト利用規約への同意クリックが要求されている場合は勿論、例えば取引の申込み画面(例えば、購入ボタンが表示される画面)にわかりやすくサイト利用規約へのリンクを設置するなど、当該取引がサイト利用規約に従い行われることを明示し且つサイト利用規約を容易にアクセスできるように開示している場合には、必ずしもサイト利用規約への同意クリックを要求する仕組みまでなくても、購入ボタンのクリック等により取引の申込みが行われることをもって、サイト利用規約の条件に従って取引を行う意思を認めることができる。

 

 なかなか分かりにくい文書ですね。

 結局何をすればいいかというと、サービスの申込画面に、「利用規約はこちら」といった感じで、分かりやすくハイパーリンクを設置しておけば、申込ボタンを押してもらったことで、利用規約の同意を得たといえますよ、(利用規約を全文表示するなどした上で)「利用規約に同意します」といったボタンを別途押してもらうようなことまでは、しなくても大丈夫ですよ、と言っているのです。

 皆さんが思っていたよりも、利用規約の同意は取りやすいですよね。

 

 といっても、実際に裁判になった場合、判断するのは裁判所なので、これで絶対大丈夫とはいえません。

ですが、経済産業省が関係各所の協力を得て示した解釈なので、おそらく大丈夫でしょう。

 

 

同意を取った後も大事

 上のやり方で同意を取ったとしても、「そんな利用規約は知らない!」とクレームをいってくるユーザーも、中にはいるでしょう。

 

 そこで、ユーザーが申込ボタンを押した際のログデータは取っておき、ユーザーに送る申込確認メールの中で、利用規約を全文引用するなどしておくと、そういったクレームに対処できます。

 

 申込画面の設計が、ユーザーからの同意が有効に取れているか、専門家のチェックを受けるようにしましょう。

 

 

③利用規約を自由に変更する方法

 利用規約の変更と炎上

 サービスをリリースした後になって、利用規約を作った当初は想定していなかった事態が生じることは、よくあります。

 

 例えば、一部のユーザーが望ましくない形でサービスを利用する問題が発生して、しかし「禁止行為」の規定の中で、その行為が禁止されていなかったので、追加する場合。あるいは、他社のものを流用して適当に作った利用規約に不備が見つかり、修正する場合…。

 

 その一方、利用規約の変更は、一歩間違えると、ネット上で大炎上します。2008年にはmixiの利用規約変更をめぐって、大騒動になりました。

 

 

全ユーザーの同意が必要?

 では、利用規約はどうやって変更すればよいのでしょうか。

 

 そもそも、利用規約は、事業者とユーザーとのサービス利用契約の内容を合意した(電子的な)契約書です。

 そして、常識的に考えれば、契約書の内容を、一方当事者が自由に変更できるわけありません。法律の原則でも、契約内容の変更は両当事者が合意することが必要です。

 

 そのため、各ユーザーから個別に同意を取らないと、そのユーザーとの間で利用規約を変更することはできません。

 ですが、ユーザーが大勢いるWebサービスで、現実には無理な話です。

 

 

自由な変更を可能にする規定

 そこで、利用規約の中に、利用規約の変更に関する、以下のような規定を入れておくことが一般的です。

 

(規約の変更)

1 当社は、理由の如何を問わず本規約をいつでも任意に変更することができます。

2 本規約の変更は、本サイトに掲載した時点より効力を生じるものとします。

 

 先ほど説明したとおり、法律の原則では、契約内容の変更は両当事者が合意することが必要です。

 ですが、このような規定も有効と解釈されています(実際、大手企業の利用規約にも、普通に入っています)。

 

 というのは、ユーザーが大勢いるWebサービスで、事業者側に利用規約の変更権を認めないと不便ですし、ユーザーも、事業者が利用規約をいつでも変更できること(そう規定された利用規約)に同意した上で、サービスを利用しているからです。

 

 

実際に変更する場合の注意点

 ただ、注意しないといけないのは、この規定があるからといって、無制限に変更可能なわけではありません。

 あまりにもユーザーに不利な変更は、無効になると考えられます。

 

 また、変更の効力は、あくまでも変更時点から将来に向かって生じます。

 サービス開始時点まで遡って効力が生じるとなると、ユーザーに対して騙し討ちになるからです。

 

 そして、当たり前のことですが、変更した利用規約は、サイトに掲示する必要があります。

 それから、サイトの新着情報で取り上げたり、新旧条文対照表を掲示したりすることで、変更の事実や内容をきちんと周知した方が親切です。

 それに、「そんな変更は知らなかった」というユーザーからの苦情にも対処できます。

 

 同じ理由から、重要な変更を行う場合は、変更までの予告期間を設けて、変更を受け入れられないユーザーが、サービスの利用を中止したり、代替サービスを探すための時間的余裕を与えた方がよいです。

 

 mixiのケースでも、利用規約の変更に関する規定があったのですが、ユーザーの反発が大きく、撤回することになりました。

 

 実際に利用規約を変更する際は、専門家のアドバイスを受けて、法的に有効で、かつ、ユーザーの反発を受けないような方法で変更しましょう。

 

 

④ユーザーが投稿したコンテンツの権利処理の方法

mixiの利用規約変更炎上事件

 2008年に起きたmixiの利用規約変更炎上事件、あれは何が原因だったか、皆さん覚えているでしょうか。当時の経緯を、簡単におさらいしましょう。

 

 2008年3月3日、mixiは、4月1日から利用規約を変更することを発表し、(新)利用規約を公表しました。ところが、公表された(新)利用規約には、以下のような規定がありました。

 

1. 本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。

2. ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。

 

 この規定をそのまま読むと、mixiは、ユーザーが投稿した日記を、自由に使うことができる(書籍化して販売するなど)ことになります。

 そのため、mixiのユーザー間で一気に反発が広がり、ネットで大炎上したわけです。

 翌3月4日、mixiは記者会見を開き、今回の利用規約変更の目的は、【①投稿された日記等の情報が、mixiのサーバーに格納する際、データ形式や容量が改変されること。②アクセス数が多い日記等の情報については、データを複製して複数のサーバーに格納すること。③日記等の情報が他のユーザーによって閲覧される場合、mixiのサーバーから国内外に存在するユーザー(閲覧者)に向けて送信されること。】これらに対応するためのものであり、ユーザーの日記を書籍化するなど、マネタイズのためのものではない、と釈明しましたが、騒動収まりませんでした。

 結局、mixiは、3月19日、(新)利用規約を、以下のような規定に変更することを発表し、ようやく騒動は収まりました。

 

1. 本サービスを利用して投稿された日記等の情報の権利(著作権および著作者人格権等の周辺権利)は、創作したユーザーに帰属します。

2. 弊社は、ユーザーが投稿する日記等の情報を、本サービスの円滑な提供、弊社システムの構築、改良、メンテナンスに必要な範囲内で、使用することができるものとします。

3. 弊社が前項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、情報の一部又は氏名表示を省略することができるものとします。

4. 弊社が第2項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、ユーザーが設定している情報の公開の範囲を超える形ではこれを使用しません。

 

 この事件は、ユーザーがWEBサービスに投稿(送信)したコンテンツ(テキスト・画像・動画など)の「著作権」が誰のものになるのかという、簡単なようで、実は皆さんあまり良く分かっていない問題について、浮き彫りにしました。

 

 

自社には関係ない話?

 「そんなことがあったのか。SNSって、大勢の個人ユーザーを相手にするから大変だな。まぁ、当社はSNSには手を出していないので、関係のない話だな。」と思ったあなた。本当に関係のない話なのですか。

 

 BtoBのWEBサービスであっても、グループウェアなど、ユーザーがコンテンツを投稿するサービスもあります。

 また、いわゆるSNSではなくても、WEBサービスの中に掲示板機能などがあれば、そこにユーザーはコンテンツを投稿することになるので、やはりその権利処理をどうするかが問題になります。

 

 それでは、ユーザーが投稿したコンテンツの権利処理は、どうすればいいのでしょうか。

 

 

mixiの失敗

 mixiの利用規約変更の問題点は、ユーザーが投稿したコンテンツについて、無制限に利用できる権利を(ユーザーがmixiに)与える、という内容になっていたことです。

 

 この点について、mixiの釈明では、サービスを運営するために必要な範囲でコンテンツを利用をすることに関する規定であり、ユーザーの日記を書籍化するなど、マネタイズのためのものではない、とのことでした。

 

 確かに、バックアップのためにコンテンツのデータをコピーしたり、あるいは、画面表示の仕様との関係から、投稿されたコンテンツを一部修正(色調を変えたり、文書の冒頭部分をサムネイル化等)する必要はあります。

 そして、これらの行為は、いずれも、コンテンツ(著作物)の利用行為なので、ユーザー(著作権者)から、権利許諾を得る必要があります。

 

 しかし、それならば、あくまでも、サービスを運営するために必要な範囲で利用する権利を(ユーザーが会社に)与える、という内容にしておけばよかったのです。

 それならば、ユーザーが懸念するような、コンテンツを勝手に利用してマネタイズされる、という事態は起きないので(本サービスの運営のために必要な範囲は超えるので)、ユーザーに対して、あらぬ誤解を与えずに済みますし、事業者側も、サービスの運営に支障はありません。

 

 「大は小を兼ねる」という意識で、なるべく事業者側に広めの権利を確保しておきたい、という気持ちは分かります。

 しかし、最近は、ユーザー自身の権利意識も高まっていますし、特にBtoCのサービスの場合は、ユーザーの反感を買うような利用規約にすると、炎上する可能性があります。

 

 利用規約は、「事業者側の権利を確保する」という観点だけでなく、「ユーザー側に誤解を与えない」という観点も大事です。

 

 自社の利用規約が、そのような観点から大丈夫かについても、専門家のチェックを受けるようにしましょう。

 

 

⑤ユーザーの問題行動の責任をサービス運営者が負わない方法

コンテンツの投稿と著作権者の許可

 ユーザーがコンテンツを投稿できるウェブサービスは、とにかく沢山あります。

 大手だと、掲示板では2ちゃんねる、日記ではFacebook、動画ではyoutubeなどですね。

 ユーザのほとんどは、自分で作った(自分に著作権のある)コンテンツを投稿するのですが、他人が作った(自分に著作権のない)コンテンツを、許可なく投稿するケースも、目につきます。

 

 ウェブサービスにコンテンツを投稿する行為は、著作物の利用行為にあたり、著作権者の許可なしには、行うことはできません。

 そのため、許可なく投稿したユーザーは、著作者の著作権を侵害しているため、法的責任を負うことになります。

 

 

著作権侵害の法的責任

 具体的には、民事上の損害賠償責任を負うことになりますし、刑事罰として10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(両方の場合もあり)を科せられることになります。(ノーモア映画泥棒のCMでも、そんなことを言ってましたね)

 みなさんも、ユーザーがこのような責任を負うことは、当然だと思うでしょう。

 

 それでは、ウェブサービスの運営者も、場合によっては責任を負うということを、知っていましたか。

 

 

運営者が負う責任

 ウェブサービスの運営者の立場としては、利用規約の中で、「権利侵害コンテンツの投稿は禁止する」と規定しており、サービス上では禁止しているので、それに違反したユーザーの行為について、なぜ責任を負わないといけないのか?と思われるかもしれません。

 

 しかし、運営者の責任が争われた裁判で、裁判所は、以下の様な判断を示して、運営者に一定の責任を負わせています。

 

(東京高等裁判所平成17年3月3日判決:2ちゃんねる小学館事件:要約)

①ウェブ上で誰でも匿名で書込・閲覧ができる掲示板を運営している者は、著作権侵害の書込が行われないよう、注意事項を適切に案内するなど、事前の対策を講じることが必要である

②それだけでなく、著作権侵害の書込があった場合は、速やかに是正すべき義務がある

③少なくとも、著作権者等から、著作権侵害の指摘を受けた場合、可能ならば、書き込んだ者に対して照会をすべき

④さらに、著作権侵害が明白なときは、直ちに書込を削除するなど、対処すべき

 

 そして、この裁判所の判断を前提とすると、単に利用規約上で権利侵害コンテンツの投稿を禁止しているだけで、実際には権利侵害の投稿を放置しているような場合は、上の②~④に対応できていないことになり、したがって運営者は、責任を負うことになってしまいます。

 

 

裁判所の考えは妥当

 この点、著作権侵害の「場」となっている投稿サイトが存在することによって、著作権侵害が拡大している面も、否定できません。

 また、著作権者の立場からすれば、著作権侵害のコンテンツ投稿を行っている者を探し出すのは大変なので、著作権侵害に対処するためにも、(存在が明らかな)運営者に責任を負わせる必要もあります。

 

 このように、裁判所の考えは、妥当なものと言えます。

 

 ただ、コンテンツ投稿サービスを運営している皆さんは、自社がこのような重い責任を負っているということを十分に理解する必要があります。

 

 

 そして、ユーザーがこのような問題行動を起こした場合は、専門家に相談の上、利用規約を使って適切に対処するようにしましょう。