利用規約の作成・チェックポイント② 利用規約を自由に変更する方法

利用規約の変更の際は慎重に!炎上した事例も

サービスのリリース後、利用規約を作った当初は想定していなかった事態が生じることは、よくあります。

例えば、一部のユーザーが望ましくない形でサービスを利用する問題が発生したものの、「禁止行為」の規定の中で、その行為が禁止されていなかった場合。あるいは、他社のものを流用して適当に作った利用規約に不備が見つかり、修正する場合…。

そういった修正が必要になった際、慎重に利用規約を変更する必要があります。(一歩間違えると、ネット上で大炎上します)

例えば、2008年にはmixiの利用規約変更をめぐって、大騒動になりました。

 

mixiの炎上事件から学ぶ、利用規約変更時のお作法

 
2008年3月3日、mixiは、同年4月1日から利用規約を変更することを発表して(新)利用規約を公表しました。

その内容は、ユーザーが投稿したコンテンツを無制限に利用できる権利をユーザーがmixiに与えるようなものだったため、ユーザーの日記を書籍化するなどマネタイズを行うつもりなのかと、多くのユーザーが反発して炎上しました。

mixiの説明によれば、この変更は、サービスを運営するために必要な範囲でコンテンツを利用をするためのものであり、コンテンツのマネタイズのためのものではないとのことでしたが、騒動が収まらなかったため、結局mixiは一旦公表した(新)利用規約を撤回し、内容の差し替えを余儀なくされました。

では、利用規約はどうやって変更すればよいのでしょうか。

そもそも、利用規約は、事業者とユーザーとのサービス利用契約の内容を合意した(電子的な)契約書です。

と言っているのです。

そして、常識的に考えれば、契約書の内容を、一方当事者が自由に変更できるわけありません。法律の原則でも、契約内容の変更は両当事者が合意することが必要です。

そのため、各ユーザーから個別に同意を取らないと、そのユーザーとの間で利用規約を変更することはできません。

ですが、ユーザーが大勢いるWebサービスで、現実には無理な話です。
 

一般的によく使われる自由な変更を可能にする規定

 
そこで、利用規約の中に、利用規約の変更に関する以下のような規定を入れておくことが一般的です(大手企業の利用規約にも、普通に入っています)。

(規約の変更)
1 当社は、理由の如何を問わず本規約をいつでも任意に変更することができます。
2 本規約の変更は、本サイトに掲載した時点より効力を生じるものとします。


先ほど説明したとおり、法律の原則では、契約内容の変更は両当事者が合意することが必要です。

ですが、ユーザーが大勢いるWebサービスで、事業者側に利用規約の変更権を認めないと不便です。

それに、ユーザーも、事業者が利用規約をいつでも変更できること(そう規定された利用規約)に同意した上でサービスを利用している以上、そのような事業者からの一方的な変更権は認めるべき、と考えられていました。

ですが、2020年4月1日施行の改正民法には、利用規約のようないわゆる「定型約款」について、

➀ その変更が相手方にとって利益となる変更であること

➁ 相手方にとって不利益となり変更である場合には、その変更が契約の目的適合性と合理性を有すること

いずれかでないと、一方的に利用規約を変更することはできなくなりました。

改正民法の施行により、利用規約を自由に変更できる規定は入れられなくなったので、気をつけてください。

 

専門家のアドバイスを受けて、ユーザーの反発を受けない改正民法に従った利用規約の変更をしましょう

 
変更の効力は、あくまでも変更時点から将来に向かって生じます。

サービス開始時点まで遡って効力が生じるとなると、ユーザーに対して騙し討ちになるからです。

そのため、いつから変更の効力が発生するか、定める必要があります。

そして、変更した利用規約は、サイトに掲示するなどして周知する必要があります。

改正民法が、利用規約のようないわゆる「定型約款」について、その変更に際して適切な方法で周知することを求めているからです。

その点からすれば、サイトの新着情報で取り上げたり、新旧条文対照表を掲示した方が良いでしょう。

それに、「そんな変更は知らなかった」というユーザーからのクレームにも対処できます。

同じ理由から、重要な変更を行う場合は、変更までの予告期間を設けて、変更を受け入れられないユーザーが、サービスの利用を中止したり、代替サービスを探すための時間的余裕を与えた方がよいです。

mixiのケースでも、利用規約の変更に関する規定があったのですが、ユーザーの反発が大きく、撤回することになりました。

実際に利用規約を変更する際は、専門家のアドバイスを受けて、改正民法に従った内容、手続きで、かつ、ユーザーの反発を受けないような方法で変更しましょう。