Q.ネットで拾った契約書雛形を使って契約書を作っても大丈夫?

A.多くの企業が、雛形をそのまま使えばどうにかなるだろうと思って、ネットから拾ったり、以前他社から示された契約書の雛形を、そのまま使っています。しかし、これは非常に危険な行為です。

例えば、ソフトウェア開発委託契約書には、瑕疵担保責任の規定があります。 納品から一定期間内に発生した不具合は無料で対応するけど、期間経過後に発生した不具合は対応しない、という規定です。

雛形ですと、納品したソフトウェアの瑕疵担保責任は、納品後、1年とされています。 これは、民法上、請負契約の瑕疵担保責任の期間が、1年間とされているので、それに従った規定です(これよりも短い期間にしても、有効です)。

これが、例えば基幹システムであれば、1年も使っていれば、不具合はほぼ全てわかるので、別におかしな規定ではありません。

しかし、場合によっては、瑕疵担保責任が1年というのは、短いのです。 以前、私が相談を受けた事件です。

その事件でクライアントは、ある会社と共同で、試験用の機器を開発しました。 クライアントが、企画立案や、ハードウェアの開発を行い、相手の会社が、ソフトウェアの開発を行ったのです。

契約にあたってクライアントは、ソフトウェア開発委託契約書の雛形を使いました。 もちろん、雛形ですので、瑕疵担保責任は1年とされていました。

 

クライアントは、相手の会社からソフトウェアの納品を受け、簡単にデモを行いましたが、特に不具合は見つかりませんでした。

その後、クライアントは、各地の展示会に出展したりして、その機器のプロモーションを行いましが、なかなか引き合いがなく、時間が経過してしまいました。

そんな中、ようやく興味を持ってくれる企業が現れて、試用評価を行なってもらえることになったのですが、試用評価の結果、展示会のデモでは見つからなかった重大な不具合が、沢山見つかりました。

そこで、クライアントは相手の会社に対し、その修正を求めたのですが、その時点で、納品から1年が経過していたのです。

相手も相手で、最初は修正に応じるという話でしたが、調べれば調べるほどキリが無くなって、これだけの不具合を直すのは大変だと思ったのか、瑕疵担保責任の期間が過ぎているので、対応する義務はない、と反論してきました.。

納品後1年の瑕疵担保責任というのは、ユーザーが納品を受けた後、すぐにそのソフトウェアを使うことを前提としています。

この事件のように、ソフトウェアが本格的に使われるのが、納品のしばらく後の場合、瑕疵担保責任は、長めに取らなければいけなかったのです。

 

雛形をそのまま使うリスクは瑕疵担保責任だけではありません。他にもさまざまなリスクがあります。 契約書に関するトラブルは事前の対策で未然に抑えることができるものがほとんどです。

契約書は自社オリジナルのものを作成するのを強くお勧めします。