内容証明郵便
「内容証明郵便」とは、「誰」に対して、「どのような内容」の書面を、「いつ」送ったのかということを、郵便局が証明してくれる、特殊な郵便です。
内容証明郵便は、債権回収でもっともポピュラーな手法です。これまでに送ったことのある企業も、多いと思います。
では、なぜ内容証明郵便は、債権回収でよく使われるのでしょうか。
内容証明郵便は通常、後々裁判になった際に、「相手」に対して、「このような内容」の書面を、「いつ」送った、ということの証拠にするために、利用されます。
そのため、内容証明郵便を送られた相手は、いずれ裁判を起こす可能性がある、という送り手の強い意志を感じ、真剣に対応せざるを得なくなります。
また、内容証明郵便のイメージや、あの独特の書式が、相手にプレッシャーを与える、ということもあります。
以上のことから、単に電話やメールで督促するよりも、効果があるわけです。
内容証明郵便の書き方
内容証明郵便の書き方には、決まりがあります。自由に書いて、郵便局の窓口に持っていっても、受け付けてもらえません。
内容証明郵便を書くときの決まりは、以下のとおりです。
①一枚の紙に書ける文字数に制限がある
一枚の紙に書ける文字数は、520文字までです。これを超える場合は、2枚分けて書く必要がります。その際に、2枚分の料金がかかります。また、句読点や括弧なども、1字としてカウントします。
②使用できる文字に制限がある
使用できる文字は、ひらがな・カタカナ・漢字・数字です。英語は、固有名詞に限り使用可能です。その他、+、×、%、=などは使用できます。
③用紙が2枚以上にわたる場合は割印がいる
文章が長くなり、用紙が2枚以上になる場合には、ホッチキスでとじて、そのページのつなぎ目に、差出人のハンコをおします。この印を割印または契約印と言います。三文判でも構いません。
④文字を書き間違えた場合は二本線に訂正印
書き間違えた文字を削除して訂正する場合には、二本線を引いて、消した文字の右(横書きの場合は上)に、正しい文字を書き加えます。文字を挿入する場合には、挿入する箇所の右(横書きの場合は上)に、挿入する文字を書き、括弧で挿入位置を指定します。そして、これら削除・訂正・挿入を行った行の上欄か下欄の余白に、「○行・○字削除」、「○行目・○字訂正」というように記載し、これに押印します。
ただ、内容証明郵便に訂正印などがあると、あまり体裁が宜しくないので、作りなおしたほうが良いでしょう。
⑤同文のものを最低3通必要
受取人が1人の場合でも、同じ内容の文面を3通用意する必要があります。郵便局では、1通を受取人に送り、1通を郵便局に保管し、もう1通は受領印を押して差出人の手控えにして返してくれます。差出人が複数いたり、受取人が複数いたりする場合には、その人数分必要です。
⑥封をしてはいけない
郵便局で、形式に誤りがないかチェックを受けますので、封をしてはいけません。
内容証明郵便で送る書面の内容
内容証明で送る書面は、季節の挨拶から始まるような手紙ではなく、債権回収を実現するためのものです。
こちらの要求事項を、簡潔に、そして厳しく書く必要があります。
①表題
文書のタイトルには、「売掛金請求書」や「通知書」、「支払督促状」などのように、内容証明郵便の趣旨が一目でわかるようなものを付けておきます。
②本文
以下の点を記載すると、より効果的になります。
・請求している債権が、いつ締結した、どの契約から発生したものか特定する
・証拠が手元にある場合は明記して、説得力を高める
・支払期限を設けて、先延ばしを防ぐ
・期限までに支払いがない場合に、法的手段に出ることを明記して、プレッシャーを与える
③差出人・受取人
個人の場合は、住所・氏名。会社や法人の場合は、所在地・名称・代表者名を記載し、差出人は押印します。
代理人を立てた場合は、代理人も同様に記載して押印します。
④差出年月日
差出日を明確にするため記載します。
内容証明郵便の費用
内容証明料 420円(2枚目から1枚につき250円増加)
書留料 420円
郵便物の料金 25グラムまで80円
50グラムまで90円
配達証明料 300円
内容証明郵便は、弁護士に依頼しないで、自社で作成して送ることもできます。弁護士に頼んだ場合とで、法律的な効果に違いはありません。
ただ、弁護士から内容証明郵便を送られた相手は、「もしこれを無視したら、次は裁判を起こすぞ。」という圧力を感じます。
そのため、弁護士から送る内容証明郵便には、会社で送る場合よりも、強い効力があります。
もちろん、弁護士が内容証明郵便を送っただけで、払ってくるかは相手によりけりです。
ただ、私は以前、難癖をつけて約400万円の請負報酬を半年近く支払わなかった取引先への債権回収の依頼を受け、弁護士名義で内容証明郵便を出したことがありました。その事件では、内容証明郵便が相手に届いてから、わずか2日後に、報酬全額を支払ってきました。
もし、自社名義で内容証明郵便を送ろうと思っている場合でも、まずは弁護士のアドバイスを聞かれた方が、スムーズに出せると思います。
取引先が、債権・売掛金を支払わない場合は、まずはお気軽に弁護士にご相談下さい。