少額訴訟
「少額訴訟」とは、60万円以下の金銭の支払を求めて裁判を起こすときに、利用できる手続です。
金銭の支払を求めて裁判を起こす場合、その金額が60万円以下であれば、通常の訴訟or少額訴訟、どちらかを選ぶことができます。
「訴訟」と聞くと、なんだか複雑で敷居の高いイメージを持たれると思います。
しかし、少額訴訟については、そうでもありません。
通常の訴訟と比べて、手続は簡単ですし、通常訴訟にないメリットもあります。
実際、私の顧問先の企業でも、私と顧問契約を結ぶ前は、自社で少額訴訟を行なって、かなり債権回収に成功していました。
企業としても、ぜひ少額訴訟にチャレンジしてみて、債権回収を成功に導いて下さい。
少額訴訟
少額訴訟のメリットは、何よりそのスピードです。
たった1回の期日(長くて1時間、短ければ10分前後で終わります)で、手続が終わり、その日の内に判決が出ます。
通常の訴訟では、判決が出るまで1年以上かかることがザラにあるので、このスピードは圧倒的です。
もちろん、判決が出ても払わない相手には、今度は差押などをしなければいけません。
ただ、裁判所の判決という権威のあるものを出されれば、かなりの程度、払ってくる相手が多いです。
もう一つのメリットとして、少額訴訟では、弁護士でなくても、会社の担当者が、代理人として訴訟で活動できることです。
通常の訴訟では、弁護士でなければ、基本的には、代理人として活動(書面を作ったり、出廷したり)できません。
そして、弁護士を代理人とすれば、弁護士費用も数十万円単位でかかります。債権額が低い事件では、足が出てしまいます。
ところが、少額訴訟では、弁護士以外でも、裁判所が許可すれば代理人になれるので、会社の担当者を代理人にすることができます(裁判所も、普通は許可します。)ので、弁護士費用をかけずに利用できるのです(かかるコストは、担当者の日当と交通費で済みます)。
これだけ聞くと、60万円以下の金銭請求の裁判は全部、少額訴訟を利用すればいいのでは、と思うかもしれません。
しかし、少額訴訟には、デメリットもあります。
少額訴訟のデメリット
相手方が、少額訴訟を起こされた時点で、通常の裁判で対応したいと希望した場合や、少額訴訟の判決に異議を出した場合、手続が通常訴訟に移ってしまうのです。
そうなると、少額訴訟の準備に費やした時間・労力が、無駄になってしまいます。
相手方が、何の理由もなく踏み倒そうとしている場合ではなく、商品やサービスに瑕疵があるなどと主張して、支払を拒んでいる場合は、まず間違いなく、通常訴訟に移ります。
それなら最初から、通常訴訟を起こした方が早いわけです。
もう一つのデメリットが、裁判所の場所です。
通常訴訟では、原則として、訴えを起こす側の所在地にある裁判所で、訴訟ができます。
しかし、少額訴訟では、相手方の所在地にある裁判所で訴訟を行わないといけません。
そのため、1回の期日で済むといっても、相手方の所在地が遠ければ、そこの裁判所まで行く手間がかかります。
さらに困ったことに、相手方の希望や異議によって、少額訴訟から通常訴訟に移る場合(最初に挙げたデメリットです)、同じ裁判所で、引き続き手続が行われることになります。
通常訴訟は、弁護士に依頼しないと、対応は困難です。
そこで、自社のエリア内の弁護士に依頼することになりますが、裁判所が遠く離れた所になると、弁護士にその分の日当を払わなくてはなりません。
最初から通常訴訟を起こせば、自社の所在地にある裁判所で訴訟ができたので、余計なコストがかかってしまうのです。
というわけで、少額訴訟は、①債権額が60万円以下で、②単なる踏み倒しで、③自社と相手方が(県をまたぐほど)離れていない場合に、効果的な債権回収の方法になります。
弁護士に相談するような債権回収の事件は、大抵の場合、相手方にも言い分があって支払を拒んでいることが多いので、弁護士が少額訴訟の手続を代理することは、ほとんどありません。
顧問先からの日常的な債権回収相談の中で、少額訴訟の利用方法について、アドバイスをすることになります。