利用規約の作成・チェックポイント③ ユーザーが投稿したコンテンツの権利処理の方法 タスク

mixiが利用規約の変更で炎上

2008年に起きたmixiの利用規約変更炎上事件、あれは何が原因だったか、皆さん覚えていらっしゃいますか?当時の経緯を、簡単におさらいしましょう。

2008年3月3日、mixiは、4月1日から利用規約を変更することを発表し、(新)利用規約を公表しました。ところが、公表された(新)利用規約には、以下のような規定がありました。

”1. 本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。
2. ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。”

この規定をそのまま読むと、mixiは、ユーザーが投稿した日記を、自由に使うことができる(書籍化して販売するなど)ことになります。

そのため、mixiのユーザー間で一気に反発が広がり、ネットで大炎上したわけです。

翌3月4日、mixiは記者会見を開き、今回の利用規約変更の目的は、

①投稿された日記等の情報が、mixiのサーバーに格納する際、データ形式や容量が改変されること。

②アクセス数が多い日記等の情報については、データを複製して複数のサーバーに格納すること。

③日記等の情報が他のユーザーによって閲覧される場合、mixiのサーバーから国内外に存在するユーザー(閲覧者)に向けて送信されること。

これらに対応するためのものであり、ユーザーの日記を書籍化するなど、マネタイズのためのものではない、と釈明しましたが、騒動収まりませんでした。

結局、mixiは、3月19日、(新)利用規約を、以下のような規定に変更することを発表し、ようやく騒動は収まりました。

”1. 本サービスを利用して投稿された日記等の情報の権利(著作権および著作者人格権等の周辺権利)は、創作したユーザーに帰属します。
2. 弊社は、ユーザーが投稿する日記等の情報を、本サービスの円滑な提供、弊社システムの構築、改良、メンテナンスに必要な範囲内で、使用することができるものとします。
3. 弊社が前項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、情報の一部又は氏名表示を省略することができるものとします。
4. 弊社が第2項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、ユーザーが設定している情報の公開の範囲を超える形ではこれを使用しません。”

この事件は、ユーザーがWEBサービスに投稿(送信)したコンテンツ(テキスト・画像・動画など)の「著作権」が誰のものになるのかという、簡単なようで、実は皆さんあまり良く分かっていない問題について、浮き彫りにしました。

mixiの事件は他人事ではない!?

「そんなことがあったのか。SNSって、大勢の個人ユーザーを相手にするから大変だな。まぁ、当社はSNSには手を出していないので、関係のない話だな。」

と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、これは他人事ではありません。

BtoBのWEBサービスであっても、グループウェアなど、ユーザーがコンテンツを投稿するサービスもあります。

また、いわゆるSNSではなくても、WEBサービスの中に掲示板機能などがあれば、そこにユーザーはコンテンツを投稿することになるので、やはりその権利処理をどうするかが問題になります。

それでは、ユーザーが投稿したコンテンツの権利処理は、どうすればいいのでしょうか。

ユーザーの反感を買わない利用規約の変更方法

mixiの利用規約変更の問題点は、ユーザーが投稿したコンテンツについて、無制限に利用できる権利を(ユーザーがmixiに)与える、という内容になっていたことです。

この点について、mixiの釈明では、サービスを運営するために必要な範囲でコンテンツを利用をすることに関する規定であり、ユーザーの日記を書籍化するなど、マネタイズのためのものではない、とのことでした。

確かに、バックアップのためにコンテンツのデータをコピーしたり、あるいは、画面表示の仕様との関係から、投稿されたコンテンツを一部修正(色調を変えたり、文書の冒頭部分をサムネイル化等)する必要はあります。

そして、これらの行為は、いずれも、コンテンツ(著作物)の利用行為なので、ユーザー(著作権者)から、権利許諾を得る必要があります。

しかし、それならば、あくまでも、サービスを運営するために必要な範囲で利用する権利を(ユーザーが会社に)与える、という内容にしておけばよかったのです。

それならば、ユーザーが懸念するような、コンテンツを勝手に利用してマネタイズされる、という事態は起きないので(本サービスの運営のために必要な範囲は超えるので)、ユーザーに対して、あらぬ誤解を与えずに済みますし、事業者側も、サービスの運営に支障はありません。

「大は小を兼ねる」という意識で、なるべく事業者側に広めの権利を確保しておきたい、という気持ちは分かります。

しかし、今はユーザー自身の権利意識も高まっていますし、特にBtoCのサービスの場合は、ユーザーの反感を買うような利用規約にすると、炎上する可能性があります。

利用規約は、「事業者側の権利を確保する」という観点だけでなく、「ユーザー側に誤解を与えない」という観点も大事です。

自社の利用規約が、そのような観点から大丈夫かについても、専門家のチェックを受けるようにしましょう。