はじめに

 
メーカー(ベンダー)が、商品をエンドユーザーに販売する場合に、二つの方法があります。直接販売と、代理店販売です。
 

まず、直接販売は、文字通り、メーカーがエンドに直接商品を販売する方法です。

一方、代理店販売は、メーカーが、代理店を通じて、エンドに商品を販売する方法です。

 

代理店販売は、メーカー、代理店、双方にメリットがあります。

 

まず、メーカーとしては、他社(代理店)の販売チャネル、販売人材を活用できます。

一方、代理店としても、商品ラインナップを充実させて、顧客へのアピール力を高めることができますし、売上も上げられます。

 

そのため、代理店販売は、ビジネスの世界で一般的な販売方法です。

ですが、代理店契約は、実は法的に難しい契約です。そのため、代理店契約で失敗してしまうメーカー、代理店が、後を絶ちません。

 

そこで、メーカー側、代理店側、どちらの立場でも、この5つのポイントを押さえておいてください。

 

5つのポイント

① ディストリビューター方式・エージェント方式の違いを理解する

② 扱う商品・結ばれる契約を理解する

③ 独占契約では、直接販売権・競合品取扱・最低購入数量の3点が重要

④ 再販売価格の拘束は、独占禁止法に違反する

⑤ 契約の終了の仕方を決めておく

 

 

 

ディストリビューター方式・エージェント方式の違いを理解する 


まず、ディストリビューター方式とは、メーカーが代理店に商品を売り切り、代理店がエンドに商品を転売する契約です。

一方、エージェント方式とは、代理店はあくまでもメーカーとエンドとの契約を仲介するだけで、メーカーがエンドに商品を販売する契約です。

 

両者の違いは、以下のとおりです。

項目 ディストリビューター方式 エージェント方式
エンドとの契約関係 メーカー⇔代理店⇔エンド メーカー⇔エンド(代理店)
エンドへの販売価格の決定 代理店が決定 メーカーが決定
在庫・代金回収リスク 代理店が負う メーカーが負う
代理店の売上/粗利 販売価格/転売差益 手数料/手数料
エンドからのクレーム 代理店に責任 メーカーに責任
販促活動のために投下する資本 比較的大きい 比較的小さい

 

どちらが良いか悪いかではなく、自社に合った方を選択する必要があります。

ちなみに、技術力のある中小企業の商品を大手企業が担ぐ場合は、ディストリビューター方式が一般的です。

 

いずれにせよ、「どっちつかず」の契約はトラブルの元です。

例えば、代理店として、エンドへの販売価格を売上にしたいが、エンドに対する責任はメーカーに負わせたい、という考えでは、どっちつかずで、トラブルになります。

 

どちらの方式かを明確にした代理店契約書を作成しましょう。

 

 

 

扱う商品・結ばれる契約を理解する 


IT企業が結ぶ代理店契約で、扱う商品・結ばれる契約は何でしょうか。

 

この点は、エージェント方式ではあまり重要ではありません。エンドと契約をして商品を販売するのは、あくまでもメーカーであり、エンドとしては、成約に応じて手数料が払われれば、それでいいからです。

 

一方、ディストリビューター方式では重要です。以下、ディストリビューター方式の場合について、解説します。

 

まず、ハードの代理店契約の場合、扱う商品は、物体としてのハードで、結ばれる契約は、メーカー⇔代理店⇔エンドでは、CD-ROMの売買契約です。

 

次に、パッケージソフトの代理店契約の場合、扱う商品は、物体としてのCD-ROMと、データとしてのソフトで、結ばれる契約は、①メーカー⇔代理店⇔エンドでは、CD-ROMの売買契約と、ソフトのライセンスを受ける権利の売買契約、②メーカー⇔エンドでは、ソフトのライセンス契約です。

 

さらに、ダウンロード型ソフトの代理店契約の場合、扱う商品は、データとしてのソフトで、結ばれる契約は、①メーカー⇔代理店⇔エンドでは、ソフトのライセンスを受ける権利の売買契約、②メーカー⇔エンドでは、ソフトのライセンス契約です。

 

そして、クラウド型サービスの代理店契約の場合、扱う商品は、クラウドサービスで、結ばれる契約は、→メーカー⇔代理店⇔エンドでは、クラウドサービスを利用する権利の売買契約、②メーカー⇔エンドでは、クラウドサービスの利用契約です。

 

どうでしょう。IT企業が代理店契約を結ぶ場合、扱う商品によって、結ばれる契約は、こんなにも複雑になることが、わかりましたか。

ところで、昔の代理店契約では、物体としてのハードを扱うのが一般的でした。

そして、昔の代理店契約の理解では、このように複雑な現在の代理店契約は整理できません。

そのため、昔の代理店契約書の内容は、現在の代理店契約に適さないのです。

しかし、日本国内で出回っている代理店契約書は、昔の代理店契約の内容のままです。

 

では、そのような代理店契約書を使ってしまった場合、どのようなトラブルが起きるのでしょうか。

 

例えば、ソフトにバグがあった場合や、クラウドサービスでシステム障害が起きた場合、エンドへの責任を、代理店が負ってしまう可能性があります。

また、エンドがソフトやサービスを不正利用した場合、メーカーへの責任は、代理店が負ってしまう可能性があります。

 

これは、代理店に、予想外の責任を負わせることになり、代理店としても困りますし、また、メーカーとしても、代理店に迷惑をかけることになってしまいます。

 

というわけで、データとしてのソフトやクラウドサービスを扱う代理店契約(ディストリビューター方式)を結ぶ場合、扱う商品、結ばれる契約を正しく整理した代理店契約書を作成しましょう。

 


 

 

独占契約では、直接販売権・競合品取扱・最低購入数量の3点が重要


代理店契約には、通常の代理店契約と、独占代理店契約があります。

独占代理店契約というのは、その代理店に、その商品の取扱を独占させる契約です(エリアや期間に限定を設けるのが一般的です)。

 

代理店にとって、独占契約は魅力的です。

代理店としては、コストをかけて販売活動を行います。ようやく販売実績が上がり、コストを回収できる段階になって、他の代理店に、楽に販売されたらたまりません。

代理店としては、コストをかけるからには、なるべく独占契約にしたいところです。

 

一方、メーカーにとって、独占契約はリスクがあります。

というのは、代理店の販売能力や販売意欲がない場合、商品が塩漬けにされてしまうからです。

そのため、独占契約にするなら、きちんと代理店に販売してもらいたいところです。

 

そこで、独占契約でポイントになるのが、直接販売権・競合品取扱・最低購入数量の、3点です。

 

直接販売権とは、メーカー自身が直接商品を販売する権利です。

これがメーカーに留保されていると、代理店には不利になります。

ようやく販売実績が上がり、コストを回収できる段階になって、メーカーに(直販価格で)楽に販売されたらたまりません。

一方、直接販売権を制限すると、メーカーには不利になります。

代理店の販売能力や販売意欲がない場合、打つ手が無くなってしまいます。

 

競合品の取扱とは、代理店が、独占契約を与えられた商品と競合する他社メーカーの競合品を取り扱うことができるか、という話です。

取扱いが可能だと、メーカーには不利になります。

自社製品に力を入れてもらえないかもしれませんし、競合他社に自社の機密情報が漏れる可能性があります。

一方、取扱いが禁止されると、代理店には不利になります。

競合品の方が魅力的で売れている場合でも、手を伸ばせなくなってしまいます。

 

最低購入数量とは、代理店が、メーカーから最低限購入する(仕入れる)商品の数量です。

独占契約では、商品が塩漬けにされないよう、当然に定められています。問題は、未達成時の処置になります。

 

最低購入数量はあくまでも努力目標とすると、未達成時に、そもそも契約違反になるかどうかはっきりせず、トラブルになります。

 

一方、最低購入数量分の購入義務を課す方法は、代理店がきちんと活動をすれば最低購入数量分を上回る販売が期待できる場合でも(つまり、最低購入数量を低くし過ぎてしまった場合でも)、独占契約を解除できず、機会喪失が生じてしまいます。

 

かといって、未達成の場合は代理店契約が解除とすると、代理店が反発するでしょう。

 

以上の3点について、これまで解説してきたとおり、自社がメーカー側か、代理店側かによって、有利・不利な内容は変わってきます。

独占契約の内容が自社に不利でない代理店契約書を作成するようにしましょう。


 

 

再販売価格の拘束は、独占禁止法に違反する


ディストリビューター方式の場合、エンドへの販売価格は、代理店が決定することになります。

ただ、メーカーとしては、値崩れを防ぐためにも、代理店に安売りされたくありません。

そのため、メーカーは、エンドへの販売価格を指定したい、つまり再販売価格を拘束したいと考えがちです。

 

ですが、再販売価格の拘束は、独占禁止法に違反します。独占禁止法は、第19条で、「不公正な取引方法」を禁止しており、第2条9項4号で、不公正な取引方法の一つとして、再販売価格の拘束が挙げられています。

 

(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)

第19条

事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

第2条9項4号

9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。

四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。

イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。

 

再販売価格の拘束に該当するケースは、色々あります。

まず、エンドへの販売価格を拘束する内容の代理店契約を結ぶ場合は、ダイレクトに該当します。

次に、メーカーの示した価格で販売しない場合に、出荷停止等の不利益を課すという、間接的な圧力をかける場合も、該当します。

さらに、メーカーの示した価格で販売する場合に、リベート等の利益を与えるという、逆の側面から圧力をかける場合も、該当します。

 

とはいっても、メーカーとしては、やはり再販売価格を拘束したいところです。

そのため、実務上は、色々な工夫をして、再販売価格の拘束に該当しないような代理店契約を結んでいます。

 

独占禁止法に違反しない内容の代理店契約書を作成しましょう。

 


 

 

契約の終了の仕方を決めておく


代理店にとって、代理店契約が終了することは、望ましくない事態です。

代理店は、商品の販売活動にコストをかけています。ようやく販売実績が上がり、コストを回収できる段階になって、代理店契約を終了させられると、たまりません。

 

ですが、代理店契約が、契約期間が短期間で、自動更新の場合。

代理店は、その都度、メーカーから、更新を拒絶されるリスクを負います。

 

また、代理店契約に中途解約の規定がある場合。

代理店は、契約途中に、メーカーから一方的に契約を中途解約されるリスクを負います。

 

代理店としては、契約期間は長めで、更新拒絶や中途解約を制限した代理店契約書を作成しましょう。

 

一方、メーカーにとって、代理店契約が終了することは、どちらかというと望ましい事態です。

例えば、安く設定してしまった代理店(ディストリビューター方式)への販売価格や、高く設定してしまった代理店(エージェント方式)への手数料を変更したい場合。

あるいは、独占契約を結んだものの、代理店に販売意欲や販売能力がなく、商品が塩漬けになっている場合。

さらには、代理店が不適切な販売活動が行っているので、やめさせたい場合。

 

いずれも、話がまとまらなければ、メーカーとしては契約を終了させたいところです。

 

メーカーとしては、契約期間は短めで、更新拒絶や中途解約が自由な代理店契約書を作成し

 

ところで、ディストリビューター方式の場合、代理店契約が終了する時点で存在する在庫商品の扱いは、どうするのでしょうか。

 

代理店に在庫商品を投げ売りされると、相場が下落してしまうので、メーカーとしては困ります。

かといって、在庫商品の販売を禁止すれば、代理店の反発を受けるでしょう。

卸値で在庫商品を買い取るのも一つの手ですが、メーカーとしては、その分の売上が無かったことになってしまいます。

 

自社がメーカー側か、代理店側かによって、有利・不利な内容は変わってきます。

契約終了の仕方が自社に不利でない代理店契約書を作成するようにしましょう。

 

関連リンク

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