Q.秘密保持契約を結べば秘密は守られるの?

A.それだけでは、不十分です。

秘密保持契約さえ結べば、それで取引相手が秘密を守ってくれる、そう思っている人が多いです。

しかし、これは誤解です。

秘密保持契約に限らず、契約書に調印するのは、社長なり幹部なり、上の方です。 しかし、実際に秘密に触れるのは、現場の社員です。

いくら会社間で、しっかりとした秘密保持契約を結んでも、現場の社員が秘密保持契約を知らなければ、秘密を雑に扱われ、最悪の場合、秘密が漏れる可能性があります。

以前私は、顧問先からこんな相談を受けました。

「うちは客先から秘密情報を預かり、秘密保持契約も結ばされているんですが、うちにはパートの社員も多く、ちゃんと秘密情報を守ってくれるか心配です。」

そこで私は聞きました。
「社員の皆さんは秘密保持契約を知っているのですか?」

すると社長はこう答えました。
「いや、社員は知りません。私自身、そもそも秘密保持契約の内容をよく分かっていないので、社員に説明できないんです。」

・・・・。

これでは、いくら会社間で秘密保持契約を結んでも、何も意味がありません。 それでは、現場の社員に対し、秘密保持の義務があることを意識付ける、そのためどうすれば良いのでしょうか。

社員にも、秘密保持契約に関与させれば良いのです。

ただ、さすがに相手の会社の社員個人に対し、会社間の秘密保持契約書と同内容の契約書を締結させることは、難しいでしょう。

相手の会社も応じてくれないと思います。

そこで、こうしましょう。

【相手の会社の社員が、相手の会社に対して、秘密保持の誓約書を提出することを、秘密保持契約の中で義務付ける】

誓約書の内容は、「今回のプロジェクトで相手会社から提供を受ける秘密情報を守ります。もし秘密情報を漏洩した場合は、会社から懲戒処分を受けることに応じます」といった、簡易なものでも大丈夫です。

会社ではなく、個人の立場として、このような誓約書を提出させれば、社員も、自分自身の義務として、秘密を絶対に守らねば、と強く意識してくれるはずです。