IT企業の契約書には印紙が不要? その3

■「弁護士藤井のメールマガジン」  VOL.54  2014/3/17  

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 【IT企業の契約書には印紙が不要? その3】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

さて、前々回と前回のメルマガのおさらいです。
・「契約の成立等を証明すること」を目的として作成(印刷)された文書は、印紙税法上、印紙を貼らないといけない「課税文書」に該当する可能性がある
・契約書は、「契約の成立等を証明すること」を目的として作成されることが通常
・もっとも、契約書すべてが「課税文書」に該当するのではなく、その中の一定の種類の契約に関するものが、「課税文書」に該当する ・IT企業が取り交わすことの多いものの内、課税文書に該当するのは、以下の契約書
・無体財産権の譲渡に関する契約書(1号の1文書)=ソフトウェアやイラスト、ドキュメントなどの、著作物の譲渡に関する契約書
・請負に関する契約書(2号文書)=(個別の)ソフトウェア開発委託契約書
・継続的取引の基本となる契約書(7号文書)=ソフトウェア開発委託「基本」契約書

それでは、今回は、IT企業がよく取り交わすものの、課税文書に該当しない契約書を、解説します。 まず、ASPサービスの利用契約書(利用規約、利用約款、名称は色々ありますが、どれも同じです)は、課税文書に該当しません。 なぜかというと、ASPサービス利用契約は、基本的に、「準委任契約」という種類の契約だからです。

準委任契約とは、「仕事の実施を目的とする契約」です。「仕事の完成を目的とする契約」である請負契約とは、別の種類の契約です。 ASPサービス利用契約の場合は、「ASPサービスを運営してユーザーに利用させること」が目的なので、基本的には、準委任契約になるのです。

これに対して、ソフトウェア開発委託契約の場合は、「ソフトウェアを完成させること」が目的なので、請負契約になり、上記の2号文書に該当します。 この話をすると、「でも、継続的取引の基本となる契約書(7号文書)に該当するのでは?」と質問される方もいます。 ですが、印紙税法は、7号文書の内、令26条1号の5要件を満たす契約書を、課税文書としています。

そして、準委任契約は、この5要件を満たしません。 というわけで、準委任契約は、7号文書にも該当しないのです。 また、ホスティングサービスの契約書も、基本的には、課税文書に該当しません。 理由は、もうお分かりですよね。「ホスティングサービスを提供すること」が目的の、準委任契約だからです。

同じ理由から、SEO等のコンサルティングサービスの契約書も、基本的には、課税文書に該当しません。 成果保証型(検索エンジン●位に到達するという仕事の完成が目的)でもない限り、コンサルティングを実施することが目的な、準委任契約だからです。 それでは、IDCを利用させるハウジングサービスの契約書は、どうでしょうか。 これはちょっと複雑ですが、結論としては、課税文書に該当しません。 ハウジング契約の具体的内容は、IDCを利用(ラック使用、電源使用、設備使用等)させるという業務を行うことです。

この業務は、まず、場所や機器を貸すという点で、建物や機器(動産)の賃貸借契約の側面があり、環境を提供する業務を行うという点で、準委任契約の側面があります。 この点、印紙税法は、課税文書として、土地の賃貸借契約書(1号文書)を挙げていますが、建物や動産の賃貸借契約書は、挙げていません。

また、賃貸借契約書は、令26条1号の5要件を満たさないので、7号文書にも該当しません。 したがって、賃貸借と準委任の混合契約であるハウジングサービスの契約書は、課税文書に該当しないのです。 ・・・話について行けていますか?

とりあえず今回はこれくらいにして、次回、さらに意外な「あの契約書」が、課税文書に該当しないことを、解説しましょう!

印紙について、詳しくはこちら