Q.取引先から提示された契約書にそのまま応じても大丈夫?

A.中小企業の多くが、相手から示された契約書の内容に目を通すことなく、調印してしまいます。確認するのは社名だけ、という会社も多いです。

確かに、契約書を見ても、何が書いてあるのか、よくわかりません。その一方で、やはり「この契約書に調印して大丈夫なのか」と、何となく心配になると思います。

そのような心配をしてしまうのは、「きっとこの契約書は、取引先にとって有利な内容なのだろう。」ということに、直感的に気づいているからだと思います。

その心配は当たっています。契約書をわざわざ用意しているということは、契約書の重要性を理解して、万全な契約書を作成している相手である、と思ったほうが良いです。

私がクライアント企業から依頼を受けて作成した契約書は、当然ですが、クライアントに有利な内容になっています。

昔話になりますが、私が弁護士になりたての頃に、ソフトウェア開発委託契約書のチェックを受けたことがありました。

その時に、クライアントであるユーザーからは、完成したソフトウェアの著作権を自社が取得できるように、とのオーダーを受けました。

ただ、その開発システムの中には、ベンダー側の汎用モジュールも組み込まれる予定でした。

ベンダー側としては、新規開発部分ならまだしも、汎用モジュールの著作権までは、渡せないはずです。

私は、「これだと、さすがにベンダーから修正を求められますよ。」とコメントしましたが、クライアントがそれでいいというので、とりあえず作りました。 しかし、結局ベンダーは、その契約書の内容に異議を出すこともなく、そのまま調印してしまい、随分と拍子抜けしたものです。

このような体験を何度もする内に、私は、「多くの企業は、きちんと契約書をチェックしていない」という、残念な事実を理解したのです。

相手は大手の企業さん。だから、おかしな契約書を出してくるわけはない。

そんな風に信じていたら、大きな誤解です。大手だからこそ、優秀な法務部員や顧問弁護士の力を使って、目一杯自社に有利な契約書になっています。

取引先から示された契約書に、何も考えずに調印すれば、あなたの会社は、不利な内容の契約書に縛られてしまうのです。