支払督促

支払督促」とは、裁判所に申立てを行うだけで、裁判所の書記官から相手方に対して、債権を支払うよう命じる「支払督促」を出してくれる手続です。

「裁判所」と聞くと、なんだか複雑で敷居の高いイメージを持たれると思います。

しかし、支払督促については、そうでもありません。手続は簡単ですし、訴訟にないメリットもあります。

実際、私の顧問先の企業でも、私と顧問契約を結ぶ前は、自社で支払督促を行なって、かなり債権回収に成功していました。

企業としても、ぜひ支払督促にチャレンジしてみて、債権回収を成功に導いて下さい。

 

支払督促のメリット

支払督促のメリットは、何よりその簡単さです。

一般的にイメージされる裁判のように、法廷で互いに主張を戦わせ、証拠を集めて立証をして、裁判官が判決を出すことはありません。

裁判所に申し立てさえすれば、特に内容を審査することもなく、半ば自動的に、債権を支払うよう命令を出してくれるのです(「支払督促」という書面を、相手方に送ってくれます)。

あまりに簡単に利用できるので、一時期は、架空請求(使ってもいないネットサービス等の費用を支払えと請求してくる詐欺手口)に悪用されたこともあり、社会問題にもなるほどでした。

 

そんなに便利な制度なら、債権回収は誰でも簡単にできるじゃないか、今までの苦労は何だったんだ、と思うかもしれません。

しかし、支払督促には、デメリットがあります。

 

支払い督促のデメリット

支払督促を受けた相手方が異議を出した場合、手続が通常訴訟に移ってしまうのです(異議が出せることを懇切丁寧に解説された書面を同封して、支払督促は送られてきます)。

そうなると、支払督促の準備に費やした時間・労力が、無駄になってしまいます。

相手方が、何の理由もなく踏み倒そうとしている場合ではなく、商品やサービスに瑕疵があるなどと主張して、支払を拒んでいる場合は、まず間違いなく、通常訴訟に移ります。

それなら最初から、通常訴訟を起こした方が早いわけです。

もう一つのデメリットが、裁判所の場所です。

通常訴訟では、原則として、訴えを起こす側の所在地にある裁判所で、訴訟ができます。

しかし、支払督促は、相手方の所在地にある裁判所に申し立てないといけません

申立て自体は郵送でできるので、現地まで行く必要はありません。

もっとも、相手方の異議によって通常訴訟に移る場合、同じ裁判所で、引き続き手続が行われることになります。

通常訴訟は、弁護士に依頼しないと、対応は困難です。

そこで、自社のエリア内の弁護士に依頼することになりますが、裁判所が遠く離れた所になると、弁護士にその分の日当を払わなくてはなりません。

最初から通常訴訟を起こせば、自社の所在地にある裁判所で訴訟ができたので、余計なコストがかかってしまうのです。

というわけで、支払督促は、①単なる踏み倒しで、②自社と相手方が(県をまたぐほど)離れていない場合に、効果的な債権回収の方法になります

弁護士に相談するような債権回収の事件は、大抵の場合、相手方にも言い分があって支払を拒んでいることが多いので、弁護士が支払督促の手続を代理することは、ほとんどありません。

顧問先からの日常的な債権回収相談の中で、支払督促の利用方法について、アドバイスをすることになります。