強制執行

強制執行」とは、債権回収を強制的に行う手続きです。

例えば、相手方の持っている不動産などを差し押さえて競売にかけて、その売却代金から債権を回収する、といった方法などがあります。

企業の皆さんがよく誤解しているのが、訴訟で勝訴判決を受ければ、相手方が当然に支払ってくるであろう、という考えです。

ところが、訴訟で負けても相変わらず支払ってこないような相手は、決して少なくありません。というのは、判決を無視したからといって、別に犯罪になるわけではないのです。

その一方で、訴訟で勝ったからといって、何をやっても許されるわけではありません。

相手の事務所に押しかけて、勝手に在庫商品を回収したりすれば、逆にこっちが犯罪になります。

というわけで、債権回収は、勝訴判決を受ければ完了!というわけではありません。

勝訴判決を受けても相手方が支払ってこない場合は、強制執行をすることになります。

強制執行には、大きく分けて、①不動産に対する強制執行、②動産に対する強制執行、③債権に対する強制執行の、3種類があります。

 

(1)不動産に対する強制執行

相手が持っている不動産を差し押さえて、競売にかけて、その売却代金から債権を回収する手続です。

ただ、その不動産に抵当権が設定されていると、その抵当権者に優先的に支払われてしまいます。

そして、支払を滞るような相手は、手持ち不動産に抵当権を設定して借入をして、しかも借入額が不動産価格を上回っていること(いわゆる「オーバーローン」の状態です)が多いです。

そのため、不動産に対する強制執行そのもので債権を回収することは難しいです。

ただ、決して役に立たない制度ではありません。

不動産に対する強制執行で競売にかけられてしまうと、最終的にその不動産を使用できなくなってしまいます。

それを避けるために、いくらか支払ってくる可能性があるのです。

ちなみに、相手の事業所や社長宅の登記を確認すれば、相手の所有不動産かどうか分かります(登記は誰でも簡単に見れます)。

 

(2)動産に対する強制執行

相手の事務所にある什器備品や車、金庫などを差し押さえて、競売にかけて、その売却代金から債権を回収する手続です。

ただ、事務所内に、金銭的価値ある動産が置いてあることは少なく、せっかく費用をかけて強制執行をしても、足が出てしまうこともあります。

そのため、動産に対する強制執行そのもので債権を回収することは難しいです。

ただ、決して役に立たない制度ではありません。

いきなり事務所に、裁判所の執行官がやって来て、什器備品などを差し押さえようとすれば、社内は大きく動揺しますし、取引相手からの信用も失います。

パソコン等を差押えられてしまえば、仕事もできなくなってしまいます。

それを避けるために、いくらか支払ってくる可能性があるのです。

 

(3)債権に対する強制執行

相手が持っている債権を差し押さえて、その債権を自分で取り立てて、自分への支払いに充てる手続です。

債権執行でよく差押えの対象になるのが、銀行預金です。

相手がどこに売掛金を持っているかは、なかなかつかめませんが、相手の取引銀行は、調べればある程度わかるからです。

そして、銀行預金を差押えれば、回収すべき債権額の範囲内で、預金残高をそのまま回収することができます。

その口座が、ほとんど空であっても、取引銀行の預金口座を差押えられてしまうと、取引銀行からの信頼を失い、今後の借入に支障をきたします。

それどころか、取引銀行からの借入金の「期限の利益」を失い、一括での返済を求められる事態になって、営業上重大な支障が発生します。

それを避けるために、いくらか支払ってくる可能性があるのです。

さらに、普段はその口座が空であっても、取引先からその口座に代金が支払われる日を把握できれば、支払日にピンポイントで強制執行をかけることで、回収することができます。

 

強制執行の種類は以上のとおりです。

気をつけなければいけないのは、「強制執行の対象となる財産は、自分で見つけないといけない」ということです。

財産を見つけない限り、強制執行をしたくても出来ないのです。

強制執行は、債権回収の最後の、そして唯一強制力のある手段です。

しかし、対象となる財産を見つけない限り、使うことが出来ません。

いざという時に、きっちりと債権回収ができるよう、普段から取引先の財産をリサーチしておくようにしましょう。

強制執行は、専門的な知識を要する複雑な手続きです。

最初から弁護士に相談をしておけば、強制執行まで視野に入れて、トータルでの債権回収のサポートが可能です。

債権回収に悩まれているIT企業様は、お気軽に弁護士にご相談下さい。