WEBサービスの利用規約を作ろう!~発信者情報開示請求が来た!どう対処すればよいの?

Vol.50 2014/1/6

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■ 【WEBサービスの利用規約を作ろう!(12) ~発信者情報開示請求が来た!どう対処すればよいの? その3~】
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まずは、前回のメルマガのおさらいです。
・コンテンツ投稿型のWEBサービスを運営していると、「発信者情報開示請求」という請求が届くことがある
・この「発信者情報開示請求」は、「プロバイダ責任制限法」(プロ責法)で定められた制度
・コンテンツ投稿型のWEBサービスなどで、他人の権利を侵害するようなコンテンツが投稿された場合に、権利を侵害された人が、権利を侵害した人(違法コンテンツの発信者)が誰なのかを確認するために、WEBサービスの運営者に対して、投稿者のIPアドレスなどを開示するよう、求めることができる制度
・ただ、発信者情報開示請求が来たからといって、簡単に発信者の情報を開示してしまうと、WEBサービスの運営者が、その発信者に対して、責任を負うことになりかねない
・発信者情報開示請求が認められるためには、プロ責法が定める、三要件を満たす必要がある
・その中の、「権利侵害の明白性」という要件には、注意が必要
・名誉を毀損する表現であっても、一定の場合は、違法な名誉毀損にはならない
・Webサービス運営者側で、この書込が違法かどうか(権利侵害の明白性の要件が認められるかどうか)判断することは難しい
・発信者情報開示請求に迂闊に応じると、プライバシー権の侵害や、通信の秘密の侵害が、問題になってしまう

それでは、今回のメルマガでは、発信者情報開示請求が来たら、どう対処すればいいのかについて、解説します。 さて、いきなり答えを言ってしまうと、基本的には、開示請求に応じなければいいのです。
だって、違法な名誉毀損かどうか、サービス運営者側で判断するのは、難しいのですから。 それに、発信者開示請求に応じなかったことで、サービス運営者が、開示請求者に対して、法的な責任を負った、という話は、あまり聞いたことがありません。

それならば、開示請求者には悪いですが、自社が余計なトラブルに巻き込まれないためにも、基本的には開示請求に応じない、というスタンスが、リスク管理としてよいと思います。

もっとも、開示請求者に危害を加えるような犯罪予告や、誰がどう見ても違法な誹謗中傷の類いであれば、開示請求に応じるべきではあります。 それから、プロ責法には、発信者開示請求の他に、投稿の削除請求についても規定されています。 そして、発信者開示請求は、この削除請求とセットで行われる場合が多いです。

この、削除請求については、基本的には、応じてしまえば良いのです。 発信者開示請求には応じないが、削除請求には応じる、という異なる対応でも、問題はありません。 というのは、発信者開示請求に応じると、プライバシー権や通信の秘密の侵害が問題になりますが、削除請求に応じても、これらは問題にはなりません。 また、投稿者としても、投稿を削除されたところで、他のWebサービスに改めて投稿することはできるので、表現の自由はさほど侵害されないからです。

さらに、削除請求に応じたことで、サービス運営者が投稿者に対して、法的な責任を負った、という話は、あまり聞いたことがありません。 以上、まとめたとおり、サービス運営者としては、発信者開示請求には基本的には応じないが、削除請求には基本的には応じる、というスタンスで対応するのがよいです。

そのためにも、利用規約の中で、他社の権利を侵害するコンテンツの投稿を禁止するとともに、サービス運営者が、任意に投稿を削除できることを、規定しておきましょう。 禁止行為と、それに違反した場合のペナルティを、利用規約に規定しておきましょうという話は、以前のメルマガでしましたが、こういう時にも役に立つ規定なのですね。